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SPROUT



    【1.複合膜面構造物展開の宇宙実証と設計手法の検証】
    (1)複合膜面構造の展開実証
    SPROUTでは,インフレータブルチューブに窒素ガスを注入して膨らませ,その進展に付随させる形で一辺が約1,500[mm]の正三角形状膜面を展開させます.このような複合膜面構造物は次世代の宇宙機,特に,太陽発電衛星やソーラーセイルの構造様式として期待されていますが,宇宙実証はまだされていません.そこで,小型とはいえSPROUTが実証することで,実際に宇宙機に搭載され利用されるきっかけを作ることが出来ます.
    特に,2010年に小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSが成功し,2012年夏にはHTV-3にてJEM暴露部でのインフレータブル構造物の伸展/展開実験SIMPLEが打ち上げられる中,これらに続きSPROUTが複合膜面構造物の宇宙実証を成功させることは,この分野で日本が世界のトップの座を守るという重要な成果をもたらすと考えています.(図:JAXAデジタルアーカイブより転載)
    (2)複合膜面構造物の設計手法の実証
    複合膜面の展開時のデータと数値解析データとの定量的比較から,複合膜面構造物およびその展開機構の設計が妥当であることを確認します. 地上展開実験の結果から,チューブは「八角形折り」を,膜面は「三浦折り」を採用しています. 設計の妥当性の評価は,独自開発した解析ソフト「NEDA」を用いて,ジャイロの時刻歴データが解析データと90%の誤差以内で一致,搭載カメラ2台によるステレオ視画像から得た膜面の特徴点の三次元座標データが解析データとTBD%の誤差以内で一致の2つの評価より判断します.

    展開シーケンスは,一次展開(準静的)と二次展開(動的)の2つの大きな展開に分けられます. 一次展開は収納機構を保持しているダイニーマを,それに接しているニクロム線を加熱することにより溶断して蓋をバネヒンジにより開放します.展開後は膜面とチューブの,折り目の復元力によって複合膜面が収納機構からゆっくりと進展されます. 二次展開はインフレータブルチューブにガスを注入することによりチューブの進展に付随し,膜面が展開します.宇宙での展開は1月末を予定しています.










    【2.数kg級衛星用姿勢決定・制御技術の実証】
    太陽センサ・ジャイロ・地磁気センサを用いた姿勢決定実験,ならびに,磁気トルカによる姿勢制御実験を行い,数kg級衛星で可能な姿勢決定・制御レベルを示します.安価な太陽センサ・ジャイロ・地磁気センサを用いた姿勢決定実験および磁気トルカを用いた姿勢制御実験を行います.SPROUTでは高精度の姿勢決定・制御を目指すよりは,軌道上のデータから姿勢決定・制御の精度を示すこと自体に重点を置いています.既に姿勢決定・制御系を搭載した数kg級衛星はいくつか打ち上げられていますが,必ずしも十分な成功,あるいは軌道上での技術評価ができているとは言い難いです.SPROUTで姿勢決定・制御実験を繰り返すことで,安価でシンプルなハードウェアでどこまで姿勢決定・制御ができるのかを定量的に評価することができ,今後の数kg級衛星にとって貴重な成果となることが期待されています.








    【3.複合膜面構造物による軌道降下率変化の予測】
    SPROUTでは,膜面を展開させるだけでなく,その広げた膜面にて空気抵抗を増大させ,衛星の軌道降下を図ります.大きさが10[cm³]で重量が1[kg]の物体では軌道降下が完了するまでに数十年かかりますが,SPROUTのように衛星に対して大きな膜面を広げることによって数年で軌道降下を完了させることができます.最近話題になっているスペースデブリの問題に真剣に向き合うと同時に,超小型人工衛星の非デブリ化の設計手法の提案・実証を行うことで,今後の超小型人工衛星の宇宙実験を促進できると考えています.(図:NASAHPより転載)
    予測方法については,複合膜面構造物の展開による大気抵抗の増加を考慮した長期軌道予測シミュレーションによる軌道高度とSPROUTの実際の軌道高度とを比較し,シミュレーション結果が誤差【TBD】%以内で実際の軌道高度と一致することを示すことで,シミュレーションの妥当性を示します.予測精度については,NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が提供するSPROUTの軌道要素を5年間蓄積し,そこから求めた軌道高度とシミュレーション結果とを比較することで算出します.





    【4.アマチュア無線家による衛星運用】
    アマチュア無線ミッションは工学ミッションを終えたのちに,日大のアマチュア無線技術向上のために行うミッションです.またアマチュア無線家の方にアップリンクが行える地上局ソフトウェアを公開し無線技術向上の場の1つとして利用していただきたいとも考えています.この回線を通してアマチュア無線家の方と技術的な交流をすることで,私たちの無線通信技術の訓練を行っていきたいと思っています.具体的には次の5つのミッションを行いたいと考えています.

    • 1.デジトーカ
      デジトーカは衛星から音声メッセージを繰り返し地上に送信する機能です. デジトーカは衛星から音声メッセージを繰り返し地上に送信する機能です. SPROUTではあらかじめ地上で録音した音声をデジトーカと呼ばれるICに記録しておきます.そして軌道上からFM送信機を用いて,録音した音声を地上のアマチュア無線局に対して送信します.現在,電波法に則した内容にしようにしようと考えています.

    • 2.SSTV
      SSTVはSSTV(Slow Scan TeleVision)を用いて,衛星からカラーの静止画を地上に送信する機能です.SPROUTではあらかじめ搭載しておいた画像を,SSTV信号に変換しFM送信機を用いて地上のアマチュア無線局に送信します.送信方式はScotti1で一枚当たりの画像サイズは320pixcel×256pixelとしています.

    • 3.音声メッセージボックス(録音+再生)
      音声メッセージボックスは地上のアマチュア無線局から送信された音声データを中継する機能です.SPROUTに音声データをアップリンクすると,SPROUTはアップリンクした音声データをデジトーカに保存します.そしてFM送信機を用いて地上のアマチュア無線局へ保存した音声データを送信します.

    • 4.文字メッセージボックス(文字送信+文字出力)
      文字メッセージボックスは地上のアマチュア無線局から送信された文字データを中継する機能です.SPROUTに文字データをアップリンクすると,SPROUTはアップリンクした文字データを保存します.そしてFMパケット(1200bps)にて地上のアマチュア無線局に保存した文字データを送信します.現在送信できる文字数は最大44文字を予定しています.

    • 5.地球を作ろうプロジェクト
      地球を作ろうプロジェクトはSPROUTに搭載されたカメラを用いて地球の写真を撮影し,撮影場所ごとに分類,ホームページ上で閲覧できるようにするミッションです. このホームページには,日大で撮影した地球の写真だけでなくアマチュア無線家の方に撮影,投稿していただいた写真も載せたいと考えています. プロジェクトの特設ページに「ダウンリンクした写真」と「アップリンクしたコマンド」を投稿していただき,日大で撮影を行った軌道座標を特定し,ホームページに掲載いたします.現在地球の撮影方法は次の4パターンを考えています.

    地球撮影の際は次の4つのモードを選択するできる仕様を考えています.どのモードでも最大6枚の写真を撮影し,SSTVによって画像のダウンリンクを行います.

    • 1. 時間指定撮影モード(工学ミッションカメラ・アウトリーチミッションカメラ)
      データ処理系からの信号によりシャッターを切る.
    • 2. ADCシャッターモード(アウトリーチミッションカメラ)
      ADCの太陽センサデータから,カメラが地球の方向を向いたと判断したらシャッターを切る.
    • 3. 姿勢決定撮影モード(アウトリーチミッションカメラ)
      ADCの太陽センサ,地磁気センサ,ジャイロセンサデータから姿勢決定を行い,カメラが地球の方向を向いたと判断したらシャッターを切る.
    • 4. 姿勢制御撮影モード(アウトリーチミッションカメラ)
      ADCの磁気トルカによってSPROUTを回転させ,カメラを地球方向に向け,カメラが地球の方向を向いたと判断したらシャッターを切る.










上手くいけば自分の手で
このような画像が取れます.



    【5.地域交流活動】
    2008年4月に打上がり,現在も進行中の超小型人工衛星「SEEDS」プロジェクトでは,アマチュア無線サービスを利用して,地元小学生の音声を録音・再生し,小学生に宇宙からきた自分たちの声が聞こえてくるという機会を提供しました.また,世界中のアマチュア無線家の方々に衛星からのデータや声の受信を行う機会を提供するとともに,我々もアマチュア無線家の方と一緒に衛星を運用するという経験を得ることができましたさらに,「宇宙に届けたいメッセージ」を公募し,それらをマイクロフィルムにして衛星に搭載するというキャンペーンも行いました.このキャンペーンには,日本中から約800通,延べ1500人という々からの公募をいただき,宇宙に関心を抱いている方がこんなにも多く,また,我々は多くの方々に支えていただいていることを感じることができました.これらの活動を通じて,たくさんの方々に少しでも宇宙を身近に感じていただく手助けができたのではないかと思っています.次期衛星のSPROUTでも,アマチュア無線を通じたサービスやアウトリーチ活動などにより,より多くの方々に宇宙をもっと身近に感じていただけるように努めていきたいと考えています.SEEDS-IIと同様,一般の方々のメッセージをマイクロフィルム化し衛星に搭載,打上げ後に随時,受信イベントを通じた宇宙開発の啓蒙活動・地域への打上げ報告会等を開催します.マイクロフィルムメッセージは地域の学校やWeb等により公募させていただきました.