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SPROUT




    【全体システム】
    SPROUTの形状は一辺20[cm]の立方体で,概算質量はおおよそ7.1[kg]です. 内部構造はミッションが機能するための支援をおこなう衛星バス系(構造・熱系,電源系,通信系,データ処理系),衛星のミッションを直接果たす工学ミッション系(姿勢制御・決定系・カメラ計測系,複合膜面構造系,アマチュア無線系)から成ります.構体の材料にはアルミニウム合金を用い2枚の壁面をトラス構造で連結させることで立方体を形成し,中央には電池ボックスを配置,各搭載機器は構体に固定し,太陽電池パネルは衛星を覆うように衛星側面に搭載します.また,主衛星から分離を行うための分離機構もSPROUTでは独自開発を行います.

    ※各画像はクリックすると拡大します.

    バス系

      【構造・熱系】
      SPROUTは小型副衛星として主衛星と共にロケットに搭載されるため,構造系は主衛星に影響を与えないよう,打上げる際に考慮されるべき「打上げ時の環境条件」と「インターフェース条件」を満たすことが要求されます.ロケットからのインターフェース条件や剛性・加速度荷重・ランダム振動環境条件などの構造的要素に加え,アウトガス・中空構造のエア抜きなど,材料・材質一つ一つに細心の注意を払わなければなりません.また,熱系は打ち上げから運用終了時までにいたる熱環境に対して,搭載機器の温度を許容範囲に保たなければなりません.地球周回の衛星は数100℃〜マイナス数100℃の温度サイクルを受けます.よって何らかの熱制御を行う必要があります.無重力のため対流がないので,熱伝導を考慮しての配置や構体表面をコーティングするなどの対策を取ります.






      【電源系】
      電源系サブシステムは,太陽電池から発電した電力を二次電池に充電,電池から供給された電力を昇圧・安定化させ各サブシステムに供給するシステムです.衛星のミッションを考慮して電池や太陽電池の選定,電力充電・供給回路設計等を行います.大まかにEPSの役割は電池の充電とサブシステムへの電源供給ですが,SPROUTでのEPS設計にはミッションの他,ロケットの搭載等の要求から以下の項目を考慮して設計しています.

    • 機能・特徴
    • 1.サブシステムへの安定した電源供給
    • 2.バッテリ状態・過充電・過放電を考慮した充電制御
    • 3.打ち上げ時に起動しないよう3インヒビット設計
    • 4.運用終了時にスイッチにより充電経路を遮断
    • 1.サブシステムへの安定した電源供給
    • バッテリ(公称3.7V)からの電源供給は昇圧回路(5V)を通して,安定した電源供給を行います.
    • 2.バッテリ状態・過充電・過放電を考慮した充電制御
    • 運用を行う際,太陽電池からバッテリへの過剰な充電あるいは電力消費の多いミッションなどでバッテリへの負荷が多いと,バッテリが損傷しその後の運用に問題になる場合があります.そのためバッテリの電圧を監視し充電の制御,衛星の省電力モード,シャント回路による余剰電力消費を行って,バッテリ保護を考慮した充放電を行っています.
    • 3.打ち上げ時に起動しないよう3インヒビット設計
    • 衛星が軌道に投入される前に,打ち上げ時の振動などによる機器の故障で衛星に電源が供給されてしまうと,衛星の電波などでロケットや他の衛星に影響を与えて問題になることが考えられます.そのため電源が入るまでに直列に分離検地スイッチを3つ備える3インヒビット設計により,打ち上げ時の誤動作を抑制します.
    • 4.運用終了時にスイッチにより充電経路を遮断
    • 衛星の運用終了後,衛星から発する電波が他の衛星に影響を与えないよう考慮して,電池に充電できないようアップリンクにより充電経路をスイッチの切り替えで遮断します.






      【通信系】
      SPROUTでは,140MHz帯で地上から送信された工学/アウトリーチミッション系のアップリンクを受信・処理して衛星全体のフライトマネージメントを行うFMRサブシステム(Flight Management Receiver ― )と,衛星の電池電圧や発電量などの衛星の動作状況(ハウスキーピングデータ)をモールス信号として衛星から送信するCWサブシステム(Continuous Wave ― )を通信系サブシステムと呼んでいます(衛星から地上への送信系は430MHz帯を利用して,衛星のOBCであるCDH1・2サブシステムが担っています).

    • FMRサブシステム
    • FMRサブシステムは地上から送信された工学/アウトリーチミッション系のアップリンクを受信・処理して,衛星全体のフライトマネージメントを行うシステムで,工学ミッション用のFMR1とアウトリーチミッション用のFMR2の2回線を搭載しています,FMRサブシステムのメイン機能は以下のものとなっています.

      機能・特徴
    • 1.地上局からのアップリンクの受信・解析処理・各サブシステムへの命令
    • 2.アップリンクコマンドのセキュリティチェック(整合とれたらコマンドを処理)
    • 3.工学(FMR1)/アウトリーチ(FMR2)用の2回線且つ互いの代替を務められる冗長設計
    • 4.衛星内部のシステム監視&リセット
    • 5.アンテナ展開(FMR1とCWからの2信号による展開-2インヒビット-)

    • 1.地上局からのアップリンクの受信・解析処理・各サブシステムへの命令
      SPROUTではFMRを最上位の命令送信MPUとして,アップリンクコマンドを受信・解析して各サブシステムへ命令を行い,衛星全体のフライトマネージメントを行います.そのためバス系のリセット等の重要な処理を行うため確実な動作を行う必要があり,宇宙空間で動作実証されているSEEDS-IIとほぼ同様のシステムにしています.
      2.アップリンクコマンドのセキュリティチェック(整合とれたらコマンドを処理)
      地上局から衛星には指定したアップリンクフォーマットに沿って,先頭からコールサイン,セキュリティバイト,強制実行・バス選択バイト,実行時間,コマンド,備考データの順に送信し,日大局と他局のアップリンクの判定にはセキュリティバイトという暗号キーを入れて対処しています.
      3.工学(FMR1)/アウトリーチ(FMR2)用の2回線且つ互いの代替を務められる冗長設計
      通信系不具合の冗長として2回線備え,一部の機能を除いてコマンド処理など互いの代替を勤められる設計になっています.
      4.衛星内部のシステム監視&リセット
      アップリンクコマンドを処理する際に,各サブシステムの動作状況を集計し地上へ送信します.またそれぞれのシステムの電源入力時あるいは直接のアップリンクコマンドにより,FMRから各サブシステムをリセットします.
      5.アンテナ展開(FMR1とCWからの2信号による展開-2インヒビット-)
      FMRとCW及びRTCサブシステムからの信号により,衛星に備え付けられている送受信用のアンテナ(4系統)を展開します.

    • アップリンクフォーマット
    • 地上局から衛星には図のようなアップリンクフォーマットに沿って,先頭からコールサイン,セキュリティバイト,強制実行・バス選択バイト,実行時間,コマンド,備考データの順に送信し,日大局と他局のアップリンクの判定にはセキュリティバイトという暗号キーを入れて対処しています.詳しくは今後公開しますコマンドフォーマットをご覧ください.

    • CWサブシステム
    • CWサブシステムは各サブシステムから衛星の状態を監視する電圧計や温度センサといったハウスキーピングデータ(HK Data)を収集し,モールス信号として地上へ送信するサブシステムです.
      機能・特徴
    • 1.衛星のHKデータを集計し,モールス信号として地上に送信
    • 2.アンテナ展開 (FMR1とCWからの2信号による展開-2インヒビット-)

    • 1.衛星のHKデータを集計し,モールス信号として地上に送信
    • アップリンクコマンドあるいは衛星の動作モードに応じてCWの動作モードを決定し,モードに応じたテレメトリデータをモールス信号として送信します.

    • 【初期モード】アンテナ展開後,アップリンクが通るまでのモード.バス電圧のみを送信する.
    • 【通常モード】常用するCWモード,基本的なHKデータを送信する.
    • 【省電力モード】バス電圧低下時に強制実行し,3分間に一度ヘッダとバス電圧のみを送信する.
    • 【膜面展開前後モード】通常モードに加え,ミッション系の情報も送信する.
    • 【ロングモード】通常モードに加え,送受信2回線分の温度,サブシステムリセット回数も送信する.
    • 【カスタムモード】コマンド備考データから取得するデータ群を自由に選択・送信する.

    • 2.アンテナ展開 (FMR1とCWからの2信号による展開-2インヒビット-)
      FMRとCW及びRTCサブシステムからの信号により,衛星に備え付けられている送受信用のアンテナ(4系統)を展開します.

      SPROUTの通信系では,アップリンクに140MHz帯,ダウンリンクに430MHz帯を利用します.また,通信回線は工学ミッション用とアマチュア無線サービス用の回線を別々に設けています.したがって,SPROUTでは工学ミッション用のアップリンク回線,ダウンリンク回線,アマチュア無線サービス用のアップリンク回線,ダウンリンク回線の,計4つの通信回線が設けられています.さらに細かく分類すると,工学ミッション用アップリンクは1200bpsのFM/AFSK通信回線,工学ミッション用ダウンリンクはCW通信回線と1200bpsのFM/AFSK通信回線と9600bpsのFM/GMSK通信回線を持ち,アマチュア無線サービス用アップリンクは1200bpsのFM/AFSK通信回線,アマチュア無線サービス用ダウンリンクは1200bpsのFM/AFSK通信回線となっています.








      【データ処理系】
      データ処理系は,SPROUTの姿勢決定・制御系,カメラ計測系,複合膜面構造系など色々なシステムがセンサデータや画像を取得しております.


      そのセンサデータや画像,さらにはハウスキーピングデータ(衛星の状態を表すデータ)を処理しているのがCDH(データ処理システム)になります.CDHで各システムが取得したデータを受け取り,メモリに保存し,送信機にデータを送ることを目的としています.さらには地上局からアップリンクされた各種コマンドの受信及び各サブシステムへの命令送信を行います.また,放出からの衛星時間をカウントし,各システムと衛星時間を共有します.





      ミッション系

        【姿勢決定・制御系】
        姿勢決定制御系とは,衛星が今どちらを向いているのかを知り,衛星の向きを制御させることを行うシステムです.衛星の向きを知ることを姿勢決定と言い,衛星の向きを制御することを姿勢制御と言います.


      • ・姿勢決定
      • SPROUTでは姿勢決定を行うために,姿勢決定用のセンサを搭載しています.姿勢決定センサは,太陽光の入射方向を計測して太陽方向を割り出す太陽センサ,地球の地磁場ベクトルの計測を行う地磁気センサ,角速度の計測を行うジャイロセンサを用います.SPROUTでは自作した太陽センサを搭載します.

      • ・姿勢制御
      • 姿勢制御アクチュエータは,自作の磁気トルカを使用します.磁気トルカとは簡単に言えば,コイルに電流を流すことで磁場を発生させ,地磁場との相互作用でトルクを発生させるアクチュエータです.磁気トルカにはいくつかの種類がありますが,SPROUTではロッドにコイル線を巻いたタイプのものを搭載します.








        【カメラ計測系】
        SPROUTには工学ミッションにカメラを2つ,アウトリーチミッションに1つ用います.SPROUTの工学ミッションでは,複合膜面構造物の展開実証,複合膜面構造物の設計手法の実証を実施します.アウトリーチミッションでは,アマチュア無線家による衛星運用,地球画像やプロジェクト活動の情報提供を実施します.工学ミッションでは複合膜面構造物の形状を3次元的に計測できること・複合膜面構造物の展開中・展開後の撮影ができることが要求され,アウトリーチミッションでは地球撮影を行えることが要求されます.カメラの撮影には全5種の撮影モードがあります.

        • 1. 複合膜面構造物撮影モード(工学ミッションカメラ)
          複合膜面構造系からの信号によりシャッターを切る.
        • 2. 時間指定撮影モード(工学ミッションカメラ・アウトリーチミッションカメラ)
          データ処理系からの信号によりシャッターを切る.
        • 3. ADCシャッターモード(アウトリーチミッションカメラ)
          ADCの太陽センサデータから,カメラが地球の方向を向いたと判断したらシャッターを切る.
        • 4. 姿勢決定撮影モード(アウトリーチミッションカメラ)
          ADCの太陽センサ,地磁気センサ,ジャイロセンサデータから姿勢決定を行い,カメラが地球の方向を向いたと判断したらシャッターを切る.
        • 5. 姿勢制御撮影モード(アウトリーチミッションカメラ)
          ADCの磁気トルカによってSPROUTを回転させ,カメラを地球方向に向け,カメラが地球の方向を向いたと判断したらシャッターを切る.

          
        上記のコマンドとは別にロケットからの分離後に,カメラの撮影を行います.このカメラによって撮影された映像データのピクセル数は307,200(640×480)pixelです.撮影された画像はフルサイズ・サムネイル化(320×240,160×120.…),Scotti1形式のSSTVの三種で行います.



        【複合膜面構造系】
        SPROUTでは工学ミッションとして複合膜面構造物の展開を行います.これによって,複合膜面構造物の設計がきちんとできていたか,宇宙空間で複合膜面構造物はどのような挙動を示すのかといったことを確認し,今後の柔軟構造物の開発に役立てることを目標としています.複合膜面構造物とは柔軟構造物であるインフレータブルチューブと薄膜で構成される構造物を指します.インフレータブルチューブとは,袋状に形成した金属箔の内部に圧力を加えることによって構造物として成り立たせるものです.SPROUTでは,このインフレータブルチューブを支持部材として薄膜を広げることによって一片1,500[mm]の三角形膜を展開させます.


        柔軟構造物は,薄膜で構成されているため地上にて折り畳んだ状態で宇宙へ運ぶことが可能です.地上で小さく折り畳んで宇宙で展開させることができるので,従来の構造物に比べて大型の構造物を一度に構築することが可能になります.これらの理由から柔軟構造物は将来の宇宙構造物として注目され,昨今,世界中で精力的に研究がなされています.しかし,柔軟構造物の宇宙での展開実証が行われた例は少ないのが現状です.その原因として柔軟構造物は展開挙動が非常に不安定であることが挙げられます.柔軟構造物は外乱の影響を受けやすく展開時の挙動が非常に不安定になりやすいのです.また,宇宙に大型物資を運ぶためには非常に高額の費用が必要であるために,信頼性が要求されます.柔軟構造物では展開挙動が不安定であるために信頼性が低いため宇宙での展開実績が少なく,設計技術の確立もなされていません.柔軟構造物を将来の構造物として確立させるためには信頼性の向上が必要であり,そのためには宇宙実証を多く行い,展開挙動や設計技術の評価を続けていくことが重要になります.










        【アマチュア無線系】
        SPROUTでは,SEEDSをはじめアマチュア無線帯の周波数を利用した多くの人工衛星の受信協力をして下さっているアマチュア無線家の方々へ,またこれまで衛星通信やさらにはアマチュア無線に触れたことのない方々にも,手軽に衛星通信が楽しんで頂けるようなミッションを行います.アマチュア無線ミッション系では,SPROUTプロジェクトのアウトリーチの一つである,SPROUTとの衛星通信ミッションを担当します.SPROUTでは,音声の再生や録音,地球画像をSSTV信号に変換して画像送信などを行います.アマチュア無線ミッションの詳細は以下の通りです.

        • デジトーカ
          あらかじめSPROUTに録音した音声を宇宙から再生し,地上へ送信します.
        • SSTV
          画像をSSTV信号に変換し,地上へ送信します.受信したSSTV信号はMMSSTVというフリーソフトで確認することができます.画像には,あらかじめ保存して置いた画像と,SPROUTに搭載しているカメラで撮影した地球画像の送信を行います.また地球の画像撮影では,地上からのコマンドアップリンクにより,指定した場所での撮影も可能です.
        • 音声・文字メッセージボックス
          地上からのアップリンクで音声・文字を保存し,保存された音声・文字を再生し,地上へ送信します.
        • 地球を作ろうプロジェクト
          SPROUTに搭載されたカメラを用いて地球の写真を撮影し,撮影場所ごとに分類,ホームページ上で閲覧できるようにするミッションです.

        SPROUTは2系統の通信回線を持っており,アマチュア無線ミッションがそのうちの一つを利用します.アップリンク周波数は140MHz帯,ダウンリンクは430MHz帯です. 工学ミッション系とは独立した通信回線のため,アマチュア無線ミッション系の通信回線をアマチュア無線家の方々に公開し,SPROUTの運用を楽しんでいただきたいと考えています.
        ※アマチュア無線ミッションについての詳細はアマチュア衛星運用をご覧ください.





        分離機構

          【衛星分離機構】
          既存の分離機構に頼らず,衛星オリジナルの分離機構を開発する目的は,分離機構を独自開発することで,超小型人工衛星に与えられる設計要求を軽減することが出来るということが挙げられます.これによって,今後開発する衛星の大きさや機構などの面で自由度を上げることが可能となります.また,既存の機構の流用やメーカに作成を依頼するのではなく,自分たちの手で1から作り上げることで,そのノウハウを個人や研究室に蓄積し,将来的に宇宙開発の現場に貢献できる技術の基礎を築きます.


          SPROUTは,従来のCubeSat Projectでの標準規格である10cm立方ではなく,20cm立方で開発をしています.よってその規格に合わせるように,また衛星自体の設計要求を軽くすることを考え,冗長性を考え開発を行っています.
          放出機構の蓋は保持解放機構(HRM)によって固定されており,HRMはテグスを用いて保持されています.ニクロム線に電流を流すことで,テグスを溶断し,解放する機構となっております.分離するための信号が来てから,衛星が放出されるまで5秒以内に設計されています.